◆プロフィール

2005年東京大学大学院農学系研究科修士修了(遺伝子工学)。シカゴ大学MBA。 2005-2006年ゴールドマン・サックス証券投資銀行部門。2006-2009年ベインキャピタルにて成長企業投資を実施。 2011-2015年ユニゾン・キャピタルにて成長企業投資を実施。 2015年Angel Bridge 設立。

 

真理の探究への興味がキャリアの道筋に

-改めて河西さんの経歴をお聞きします。大学では農学を専攻されています。大学でどのような経験を積まれて新卒のキャリアを選択されたのでしょうか。

 

駒場時代はいわゆる分かりやすい「大学生」のような生活をしていました。ところが3年生になり本郷に移ったころからは一気にモードチェンジをして、両親と同じく研究者を目指すようになりました。仮説を立てて検証をしていくという過程が好きなのと、個人名で勝負していく環境に憧れていたためです。当時はイネの遺伝子組み換えなどバイオテクノロジーの研究に邁進する日々で、3年生の途中からは飛び級で研究室にお邪魔し、毎晩終電まで研究をしていました。そのまま大学院に進んだため、学部の時は就職活動を一切していなかったです。

転機となったのは大学院1年生の時です。当時の研究者の方たちは自分の専門分野については詳しいものの、世の中に如何にそれを還元していくかという部分に関しては必ずしも具体的に描いていないように見え、他の道も漠然と考えるようになりました。その時初めてプロフェッショナルファームの存在を知りました。ビジネスの世界でも仮説からアプローチしていき、自分の個人名で業界内での地位を勝ち取っていくという研究者と似た側面がある世界に出会い、ご縁を頂いたゴールドマン・サックスの投資銀行部門に入社しました。

 

-ゴールドマン・サックス入社後は投資の世界へと歩まれ、ご自身でVCを立ち上げられています。

 

投資銀行部門での経験はエキサイティングでしたが、仕事の中での仮説検証の過程が「真理の探究」と感じられないことも多々ありました。そういった中で、ある会社の売却サイドのアドバイザーに入っていた時に、PEファンドのDD(買収先の将来性やシナジー効果を分析するプロセス)に立ち会いました。DDが自分の考える真理の探究のプロセスに近かったこともあり投資ファンドに興味を持ちました。そんな中ベインキャピタルから声をかけていただき入社することになりました。従って、2006年からはずっと投資の世界にのめりこむようになりました。

10年程経った時に、独立して自分で勝負をしてみたいと思い、2015年にAngel Bridgeを設立しました。PEファンドでは100の価値を200にしますが、VCファンドは0から1、1から10を生み出します。少子高齢化右肩下がりという今の日本でこそ、この新しい会社/事業を生み出していくということが求められているように思います。今後の日本が盛り上がりを取り戻すためにもスタートアップへの投資および育成は必要だと思っています。その想いを体現したのがAngel Bridgeです。現在は150億円の資金を主にシードアーリーステージの企業に投資しています。将来的にはファンドをより一層大きくして社会へ与えるインパクトを上げていきたいです。

 

公孫会での相互扶助で日本を盛り上げていきたい

-東大公孫会には立ち上げ時から理事として関わっています。どのような想いで参加されていますか。

 

元々、周りの環境に恵まれた分を社会に恩返しをしていきたいという思いがありました。そんな中公孫会の立ち上げ前に代表理事の吉村氏に誘いを受け、理事として携わることになりました。例えば慶應大学であれば三田会のような組織が世代を超えて強固なつながりを持っていますが、東大にはそのような組織は存在しておりませんでした。せっかくなら東大の皆さんでつながりを通じて相互扶助を行うことで、より日本を盛り上げていければ良いのではないかと思い、現在に至るまで活動しています。皆努力して東大に入ったわけですから各人が自身の責任を自覚してしっかり社会に対して価値を生み出す、それを常に意識して活動してもらいたいと思っております。自分さえよければいいといった考えは早期に捨てて自分に与えられた宿命を意識しながら日本や社会のために各人が精いっぱい努力をしていく、こういった基本的な価値観を現役学生中心に伝えていくことが重要なのではないでしょうか?

 

-東大公孫会ではどのような活動をされていますか?

 

自らの経験や人とのつながりを様々な世代にシェアしています。自分が学生の時に社会人の生の話を聞けたらと思っていたので、現役の学生にはプロフェッショナルファームで歩んで来たことをベースにキャリア上のアドバイスをしています。いろいろな学生を今まで見てきて、社会人になっても年2,3回は会って定期報告をしたりと長い間交流しています。同世代の会員の方はそれぞれの環境で努力していて刺激になりますし、お互い気軽に人を紹介し合うといったと関係を構築しております。会員でチームを組んでフットサルをすることもあり、プライベートの部分でも楽しく交流しています。

公孫会は会員同士で助け合うことでとても温かいつながりができ、また会を経由して様々な人と関われることが魅力です。これからも相互扶助を通して会に広く携わっていければと思っております。

 

-ありがとうございました。